マルクとジョルジュは、兄弟の傭兵だ。
兄のマルクは「鉄壁」とあだ名される守りの名手。
弟のジョルジュは「必滅」と恐れられる弓の使い手である。
2人は仲のいい兄弟であると同時に、互いに信頼する最高の相棒であった。
ただ、問題なのは、弟のジョルジュの性格だった。
血の気が多くて喧嘩っ早い、そのうえ、相当の自信家なのである。
ときに、他人を見下すようなジョルジュの態度は、多くの者たちの反発を買っていた。
大きな軋轢とならなかったのは、ひとえに、穏やかな兄マルクが、間に入っていたからであった。
しかし、ジョルジュの態度はいっこうに改まらず、傭兵たちの我慢も限界を超えてしまう。
そんな弟の姿に、マルクは呆れ気味に
「さすがに、かばいきれない」と漏らす。
その一言は、予想外に、ジョルジュの誇りを傷つけた。
怒りに身を震わせるジョルジュは、「もう、兄貴とは組まねえ」と言い捨てて、飛び出していった。
ジョルジュは、意地になって新しい相棒を募り、戦場を巡った。
兄に自分の実力を認めさせ、対等の立場に立つ・・・。
「かばわれる」存在でいてたまるか!
「必滅」の矢は、いつもと変わらない鋭さを見せ、次々と敵を打ち倒した。
十分な戦果上げ、意気揚々と戻ってきたジョルジュを、マルクは穏やかに受け入れる。
もとよりマルクは、弟の力を信じていないわけではない。
ジョルジュもまた、兄に守られることを心底、嫌っているわけではなかった。
戦火を生きる兄弟傭兵が、再び2人で戦場に出る日も近い。
-おわり-
|